鬼が往く

距離を詰めてくる銀二に対し、釘宮はケンカキックを繰り出す!

カウンター気味の蹴りを躱せず、モロに腹に食らう銀二。

しかし。

「おっらぁあぁあっ!」

銀二はダメージを堪え、強引に釘宮に組み付いた。

そして、引っこ抜くようなブレーンバスター!

意表を突いたプロレス技に釘宮は反応できず、そのままアスファルトに叩き付けられる!

「がはあ!」

全身を貫く衝撃。

流石の釘宮も、これには立ち上がる事が出来なかった。

狂犬もまた、銀二に敗北を喫したのである。

とはいえ、その異常なまでのタフさと狂犬ぶりは、十分に銀二を苦しめた。

釘宮によって受けたダメージが、今頃になって痛む。

「くそ…」

銀二は小さく毒づいた。

…その後、釘宮を倒したその足で、銀二は明石組傘下の事務所に殴り込み。

組員十数名を病院送りにした。

姿を晦まし、明石組を恐れて逃亡したとさえ思われていた銀二の突然の出現に、組員達は為す術もなくやられてしまったのである。

何より、神楽坂に続く釘宮の敗北。

幹部を2人も潰した事により、銀二はいよいよ明石組にとっての危険人物と見られるようになった。

本来ならたった1人相手に有り得ない事であったが、神楽坂も釘宮も、明石組の中ではかなりの武闘派だ。

その2人がやられたという事は、最早銀二は只のチンピラで済まされるレベルではなくなったという事だ。

神楽坂組、釘宮一家、共に統率する組長を失い、烏合の衆だ。

本来ならあっという間に嬲り殺しにして、明石組の力を誇示するだけだった筈の抗争は、ここに来て明石組の地盤さえ揺るがしかねない状況となってきた。