鬼が往く

噛みつかれた銀二の首からは、血が流れている。

まさしく狂犬。

釘宮の喧嘩は常軌を逸していた。

「くくく…楽しいなぁおい。もっと殺ろうや!」

ノーガードで突っ込んでくる釘宮。

銀二は釘宮の顔面に右ストレートを直撃させる!

だが拳を食らいつつも、釘宮は残る片方の手で目付きを仕掛けてくる!

咄嗟に躱す銀二。

しかし、指先が微かに瞼を掠め、出血する。

その隙に、釘宮は鳩尾への蹴り!

後ずさりしながら、銀二はよろめいた。

「ヒャッハァアァアァッ!」

跳び上がりながら打ち下ろしの拳を放つ釘宮。

が、銀二はこれをアッパーで迎撃!

「その程度でくたばるほど、柔な腹筋じゃねぇんだよ」

顎に強烈なアッパーを食らった事で、釘宮は脳を揺さぶられ、ダメージが膝に来る。

足元が覚束ない。

体がふらつく。

「オラァアァッ!」

チャンスとばかりに、銀二は次々に拳を叩き込んだ。

釘宮のモヒカンを鷲摑みにし、顔面に連打を浴びせる!

最後に渾身のストレート! 

摑んだ髪の毛がブチブチと千切れ、前歯が数本へし折れた。

よろめく釘宮。

だが。

「まだだあ…」

血塗れの顔、ボロボロの体で、釘宮はまだ倒れない。

殴っても殴っても迫ってくる。

その執拗さは、一種狂気のようなものまで感じさせる。

血混じりの唾を吐き出し、銀二は釘宮を睨む。

「しつけぇ野郎だ。そろそろトドメ刺してやるよ」

銀二は釘宮に突っ込んだ!

「いい加減くたばれや!」