鬼が往く

モヒカン頭、サングラス、上半身裸で、全身に菩薩の刺青…。

ヤクザというよりは、イカれた薬物中毒者のような風貌だが、この男もれっきとした明石組の構成員だ。

釘宮 正志(くぎみや まさし)。

関西明石組直系釘宮一家組長。

その姿形(ナリ)と容赦のない喧嘩(ゴロ)から、ついた渾名が『明石組の釘バット』。

明石組の為に忠義を尽くし、明石組の障害になる者を過去何人と殺害してきた、まさしく狂犬のような男である。

「お前…沢渡やろ…待っとったで…どないして殺ったろか思て、めっちゃ勃起しとってん」

ニヤニヤしながら釘宮が言う。

「変態野郎が」

銀二は向き直った。

丁度いい。

腹癒せに明石組の奴を叩きのめしてやりたいと思っていた所だ。

「運がねぇな…死んだぞおめぇ」