鬼が往く

明石組が包囲網を敷いて、10日が経過した。

その間、銀二は東京を離れていた。

連中の包囲網の中、正面切って喧嘩を売るほど、銀二も馬鹿ではない。

しばらくの間行方を晦まし、ほとぼりが冷めるのを待っていたのだ。

10日ぶりに東京に戻ってきた時、銀二はその荒廃ぶりに怒りすら覚えた。

「野郎…」

歯噛みし、拳を握り締める。

銀二がいない間に、明石組は街を蹂躙した。

既に一般市民がまともに外を出歩けないような危険地帯と化していたのだ。

堪え切れない怒りが込み上げる。

その時。

「ヒャッハァッ!」

奇声を上げ、1人の男が特殊警棒で殴りかかってきた!

銀二は咄嗟に回避する。

…いつの間に近付いて来たのか。

全く気配がなかった。