アキヒコとデートをする時は、この一年殆ど会社から二駅上った都心の駅前の居酒屋で待ち合わせて、軽く呑みながら仕事の話しや社内のうわさ話、そして世間話をする。
暗黙の了解で、お互い二人の関係が知れるような話題は避けている。
そして、その後お決まりのホテルへ向かう。
表通りから裏通りへと雰囲気が変わる辺りで、二人の会話も恋人口調に変わる。
アイカは左手に巾着を掴んでいた。
「ねぇ、アキヒコさん。私達って、今まで社内で噂にもならずに密かに付き合い続けて、息がピッタリだと思わない?」
「アイカが、いろいろと気を使ってくれてるからね!」
アキヒコはアイカを抱き寄せながら云った。
アイカは、決めかねていた。

