ジャスティンは上手に警備員達を追い払うと、このビルにはそぐわない出で立ちの珍客をジッと見た。
実は、“EOC”のメンバーとフレンチレストランで食事をしていた時に、この不思議な女の子を見かけた。
ガラスで仕切られてはいるがオープンテラスになっているテーブルで食事をとっていると、虹色のど派手なスーツケースを転がして歩いている女の子を見つけた。
超ラフな格好ででもバランスがよく、お洒落の質がジャスティンの好みだった。
それでいて髪は全部アップにして、てっぺんで大きなお団子をこさえている。
耳元や首元には後れ毛がたれ、ジャスティンの母方の祖国フランスの女の子を思い起こさせた。
小さな顔に大きな目、鼻は小さく口元は口の割に大きな前歯がとても可愛らしかった。
そんな異彩を放つ不思議な雰囲気の女の子が、このレストランを覗いて見ている。
すると、その子は慌てたように逃げるようにその場から立ち去った。
「ごめん、すぐ戻るから、ゆっくり食べてて」
ジャスティンは映司達にそう言うと、お手洗いに行くふりをしてその子の後を追った。
同じエレベーターに乗り込んだのに、その子は夢見がちなトロンとした目でずっと外の景色を見ている。
そして、駐車場の地下3階で降りた時には驚いた。
車で来てるのか?
ここの駐車料金は恐ろしくバカ高いのに…
そう思いながらまた後をつけると、やっぱりこんな調子だった。



