「わ、私、ベランダで寝てたんですか…?
何で?どうして??」
シュウは目を丸くして質問する木の実に、カクテルを飲むように手で促した。
「そのカクテルは、今の僕の木の実ちゃんのイメージで即興で創作した。
気に入ってもらえるかな」
木の実は何だか話をはぐらかさられたような気がしたが、目の前にあるピンク色のカクテルに目を奪われた。
小さめの逆三角形のカクテルグラスが、まるでピンクのバラの花束のようだ。
「美味しい……」
木の実は、一口、口に含んでそう言うと、二口目で全部飲んでしまった。
「あ~、苺ミルクのかき氷を食べたみたい…
でも、苺はシロップじゃなくて、ちゃんと果肉も入ってたようなプチプチした食感だった。
あ~、美味しかった~~
すみません、おかわりもらえますか?」
ジャスティンが料理にこだわるように、シュウだってカクテルには命を注いでいる。
こんなに幸せそうな顔で美味しいと言ってもらえるのは、バーテンダー冥利につきる。
そして、木の実のおかわりという言葉は、ジャスティン同様、シュウの心も打ちぬいた。
シュウは満面の笑みを浮かべ、またカクテルを作り出す。
ジャスティンはそんな二人の様子を、嬉しさ半分嫉妬半分で見ていた。
食事をしたらサッサと帰ろう…
シュウとの仲は家で話をすればいいや。
すると、ジャスティンは背後で聞き覚えのある声を聞いた。
「あれ? そこにいるのはジャスティンか?」
あ~、マジでヤバい、最悪だ。
声の主は謙人だった。
土曜日にこの店にはほとんど来ないくせに、なんで今夜来るんだよ?
振り返ったジャスティンを見た謙人は、隣に座る女の子を見てヒュ~と口笛を吹いた。



