ジャスティンは木の実をエスコートして、シュウの待つカウンターの席に座らせた。
自分自身もいつもの席に腰を下ろす。
ジャスティンは、挙動不審になっている木の実が可笑しくてたまらなかった。
シュウの意味深な挨拶によって、あの晩の木の実の記憶の鍵が外れたのかもしれない。
「木の実ちゃんは何を飲む?」
シュウは木の実が店に入ってきた時、無意識に口笛を吹いてしまった。
それ位に、あのベランダで寝ていた木の実とは別人だったから。
すごく魅力的でスタイルは抜群にいいのだけれど、何かがちょっとアンバランスだった。
雰囲気は大人びたいい女に見えるのに、顔が究極に可愛すぎる。
くるっとした目に笑うと前歯が見えるその顔は、ジャスが言ううように小動物を彷彿させた。
「お、お任せでお願いします…」
蚊の鳴くような小さな声だ。
シュウはあのホモ様のくだりを思い出して、笑いそうになるのを堪えた。
「じゃあ、シャンパンに苺を入れてあげる」
「え…??」
シュウはジャスティンと顔を見合わせた。
ジャスティンの様子から、別にあの晩の話を隠している感じではなさそうだ。
「僕は、実は、木の実ちゃんと、初めましてじゃないんだよ」
木の実は隣に座るジャスティンの顔を覗きこんだ。ジャスティンは涼しい顔で鼻歌を歌っている。
「え? でも、私は、きっと、初めましてだと思うんですけど…
どこかでお会いしましたか…?」



