「そんな大切なお酒を、私と一緒の時に開けていいの…?」


木の実はシャンパンをまだ手に持ったまま、ジャスティンにそう聞いた。


「なんで…?
俺にとっては、ナッツと出会えた事が、なんか凄い意味があるようなそんな気がしてるんだ。
結構、甘口だからナッツの口にも合いそう。
いいから、飲んでみて」


木の実の胸は、もうお酒を飲んだかのようにドキドキしている。
こんなんでシャンパンとか飲んだら、一気に酔いが回りそう。


「美味しい…」


木の実のその一言で、ジャスティンの顔に満面の笑みが浮かんだ。


「だろ? 
じゃ、これも一緒に食べてみて」


ジャスティンは蓋のついたガラス製の皿の中から真っ赤な苺を取り出し、木の実のグラスの中に入れた。


「日本ではバブルの全盛期にシャンパンに苺を入れるっていうのが流行ったらしいけど、実は、ヨーロッパでは普通によくやる事なんだ。
特に、こんな甘めのシャンパンの場合はね」


木の実はシャンパンの中でさらに赤身を増して見える苺を、うっとりと眺めた。
私の知らない世界、縁のない世界、憧れの世界、そして、全てを持ち合わせてる青い目の王子様。
ここが自分の居場所じゃないことくらい百も分かっているはずなのに、何でこんなに居心地がいいのだろう。

木の実はその苺の入ったシャンパンを一口飲んでみると、甘酸っぱくて、でも、ちょっとほろ苦くて、今の私の胸の内と同じような味がした。


「美味しい…」