「ジャスティン……」


木の実はこの偶然の再会が、本物でも作られたものでもどちらでも構わなかった。
ジャスティンは、いつも、私がしんどい時に、頑張っている糸がプツリと切れそうな時に、必ず私を見つけてくれる。
木の実は、自分から会わないって言ったくせに、こんなに根性無しで意気地のない自分にほとほと嫌気がさした。


「べ、別に、後をつけてきたわけじゃないからな…」


木の実はクスッと笑った。


「そんな事、誰も言ってないよ」



「あ、そうだっけ…」


ジャスティンはやっと木の実の顔を見れた。
え? 何だか痩せた気がする。


「ねえ、ちゃんとご飯食べてる?」


木の実はジャスティンにスーツケースを持たせたまま、トコトコと階段を下りだした。
ご飯を食べてないは、イコールでお金がないに直結する。
ジャスティンの大切な秘密は聞いておいて、未だに貧乏な自分は知られたくなかった。


「これはどうするの?」


木の実はまだ階段の上にいるジャスティンを見上げて、ポカンとした顔をする。
え? スーツケースを持って一緒に下りてくれるんじゃないんだ…?


「俺は電車には乗りたくないから、このスーツケースは車で届けてやるよ。
どこまで行けばいいの?」


ジャスティンは、木の実が慌てて階段を上って来る姿を面白がって見ていた。
まるでコントを見てるようだ。

木の実は体力が落ちている自分を改めて感じていた。
階段を駆け上る足に力が入らない。

あれ…? ジャスティンが歪んで見える…

木の実はジャスティンを目の前にして膝から崩れ落ちた。