「ところで、どうして編入を?」
「父の転勤が決まって、私もそれに従ってっていう感じで……」
天羽さんの素朴な質問に私が素直に理由を答えかけたときだった。
パリイイイン!!!
「な、なにっ?」
「ああ、またあの人たちね」
勢いよく窓が砕け散る音がした。
しかもそれは、偶然に、さっき私が眺めていた向こう側の――。
「そうね。上篠さんにもひとつ忠告しておくわ。この学園には、名門の名に相応しくない問題児の集団が1つだけ存在するの。それも、あの芸能科に籍を置いている生徒たちなんだけど。
いい?学科が違うし、普通に生活していれば関わることはまずないと思うけれど、絶対に近づいてはダメよ。ろくなことないから」
割れた窓の向こう側。
ふいに死角から現れた、漆黒の生徒と、一瞬だけ、視線が交えた気がした。
