「送らなくて大丈夫か。」


タクシーに乗り込んだ彼は
私の顔を見上げたずねる。

いつものお決まりの言葉。
私の返事はわかっている。



『はい、大丈夫です。
一人で帰れますから。』



私は微笑みながら答えた。
上辺だけの笑顔…。



「そう、じゃあ気をつけて。
あっ、そうだ…」



彼は何か思い出したように
鞄をごそごそし出した。



「明日は直接客の所行くから
この書類処理頼む。」



契約書の入った封筒を
私に差し出す。



『わかりました…じゃあ…』



「ああ、また明日。」



彼が手を上げると
ドアはバタンと閉まり
タクシーは走り出した。




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