「お前きっとゲーセンなんて行った事ないだろ?」
「はぁ・・ゲーセン?テレビで見た事は有るけど行った事ないです」
「やっぱし!」
千葉君に言われる前から何となく自分でも気付いてた・・人生損してるって・・・そしてそれはこれからもずっと同じで何も変わらないんだって諦めていた・・でも、何だか・・・今日は違う。
それはやっぱり千葉君に出会ったからなのかも知れない・・・だって私・・今凄くスッゴク楽しい!
こんなにワクワクした気持ちになったのって本当に久しぶりで・・この時間がずっと続けばいいのにって本気でそう思ったんだ・・・。

そんな私の気持ちとは裏腹に20分余りでいつものバス停に着いてしまった。
陽人はバイクを止めてヘルメットを外した。
「くあぁ~っ久しぶりに走ったから超~気持ちい!」
ひなたもヘルメットを外してバイクから降りた。
「・・千葉君・・・ありがとう送ってくれて」
すると陽人は何故か照れながら言った。
「今さー・・オレの名前、初めて呼んだな・・・」
「えっ?!」
「今まで『そのー』とか『あのー』とかでしか話しかけてくんなかったけど!」
「えっ?あっ・・ごめんなさい」
「ははっいーって!ひなたがオレの事を認めてくれた証拠だろ?」
(どうしてだろう・・・?彼は不良のはずなのに凄く温かくて優しい人に見えるよ・・まるで陽だまりみたいな笑顔で私の名前を呼んでくれる・・こんな人初めてだよ)

すると陽人は空を見ながら話し始めた。
「オレさー・・・セレ学の生徒ってオレ等のことバカにして見下してる奴等ばっかりで、お高く留まってて・・頭も固くて何の面白みの欠片もねー奴等だって勝手に決めつけてた・・」
(そうなんだ・・でも確かに千葉君のイメージはあながち間違いではないのだけれど・・)
すると陽人は見上げていた眼をひなたに向けた。
「でも・・お前は違った!お前はオレが鈴高の生徒だって解った上で助けようとしてくれた・・・」
「千葉君・・」
「オレの事、ちゃんと人として見てくれた・・しかも同じ目線で話しかけてくれた・・・オレそん時・・正直、かなり嬉しかった・・」
「私も今日、千葉君に出会えて人生が変わりました・・」
「ひなた・・」
「ありがとう・・・私の知らない世界を見せてくれて・・私、こんなに楽しい気持ちになったのは本当に久し振りで、千葉君に出会わなかったらきっと・・いつものつまらない一日になっていたと思う・・・だから本当にありがとう」
「・・・・・」
「それじゃあまた。」とひなたが帰ろうとしたその時、後ろの陽人から名前を呼ばれて思わず振り返った。
「ひなた!」
「はい。」
「こんなモンじゃねーよ、お前の世界はこんなモンじゃねー!!今日なんかよりもっともっと楽しい事なんかいくらでもあんだぞ?」
「千葉君・・・」
「決めた・・」 「え?」
「これからはオレがひなたの世界を広げてやる!オレが今まで見てきた楽しい世界をお前にも見せてやる!覚悟しとけよ!!」
そう言うと陽人はバイクにまたがってバイクを走らせて行ってしまった。