「コイツは免許持ってんぞ?」
「え?だって高校2年生ですよね?」
「まぁいろいろあってな!」
その言葉にひなたもこれ以上は何も聞けなくなった。
すると陽人はガレージから一台バイクを出してきて、エンジンをかけるとバイクにまたがった。
「ホラ!行くぞ!早く乗れって!」
「こんな事・・本当にいいのかな?」
「乗らねーのか?」
悩んだ挙句ひなたは陽人の後ろにまたがった。
「お、おじゃまします」
「何やってんだ?そんなんじゃ落っこちっまうぞ・・」
「で、でもつかまるところが・・」

ひなたの言動にあきれつつ陽人は「ったく・・こーすんだよ!」と言いながらひなたの腕を掴み自分のお腹の前までひっぱり交差させた。
グイッ「きゃっ?!」いきなり両手を掴まれ後ろから陽人を抱きしめるような形になってしまったひなたは動揺して陽人に言った。
「あのっ・・私達初対面ですよね?なのに・・こんなのおかしくないですか?」
すると陽人は涼しい顔で答える「は?初対面?オレら毎日バスで会ってんじゃん」
「い、いやっでも!そのっ私・・バイクなんて乗った事ないし、こんな・・こんなの普通じゃないって言うか・・」
「はいはい分かったよ、行くぞ!」
「わっ待って!まだ心の準備がっ・・」

「出発ー!」と言いながら陽人は手慣れた手つきでバイクを発進させた。
ひなたは最初こそバイクの騒音に驚き心の中で絶叫していたものの以外にも陽人が安全運転でスピードもそんなに飛ばしていなかった。
(す・・凄い・・・)
ひなたがバイクの騒音にも慣れてきたころ陽人が話しかけてきた。
「怖いか~?」
エンジン音にかき消されないようあまり出した事の無い大声で答える「少し怖いけど大丈夫です!」
「すぐ慣れるって!」

私はこの日、彼に出会って人生が変わった。
彼に出会うまではほんの少しだけ変われた自分に喜んでいたのに・・その数時間後にはバイクにまたがり道路を走っていた。
昨日の私からは考えられない出来事で、同い年の男の子をこんな近くに感じるのも初めてで凄くドキドキした。
すると不意に千葉君に話しかけられたので私は我に返った。
「お前さぁー色々な事ゼッテー損してんぞ?」
「・・え?損?」