私は最初断ろうとしたけど・・彼の自信満々な顔を見ると断れなくなってしまった。

そして陽人はひなたを連れてこのビルの近くにあるバイク屋に何故か裏口から入って行った。
中に入るなり陽人は誰かを呼んでいるようだった。「すいませーん!タクトさん!バイク借りていいすか?」
(えっ?何?・・・バイク?)
すると店の奥から40代くらいの髭を生やしたワイルドな男性が現れた。

「何だハルか・・」その男性はひなたを見るなりこう言った。
「何だデートかよ・・こんな所に女連れ込むんじゃねーよ」
陽人は顔色一つ変えずに答えた。
「コイツはひなた、ひなた!この人は真田拓斗さん。この店のオーナー」
「はっ初めまして!と・・東条ひなたです!」
「へぇ~」とタクトは何故かひなたを頭の先からつま先までジロジロ見ると言った。
「・・お前にしちゃあずいぶん地味なの選んだな」
(なっ何この人?!・・初対面の人に向かって普通言う?・・確かに地味なのは事実なんだけど)タクトの問いに対し陽人は特に何も返答せず、代わりにこう言った。
「そんな事より、とにかく急いでるんすよ!こいつを7時までに家に帰さないといけなくて・・」
「あーあー分かった!外のガレージの中のボロバイクならどれでも好きなの乗ってけ!」
「ホントっすか!ありがとうございます!」
ひなたは『バイク』と言う単語に口を挟まずにはいられなかった。

「ちょっと待ってください!バイクなんて・・まだ免許持ってないですよね?」
「は?そんなんオレ知らねーし、つーか急いでんだろ?」
「それはそうだけど・・でもやっぱり無免許運転はダメですよ!」
「うるせーな・・門限までに帰りたいならつべこべ言わずにオレの言う通りにしろって!」
そう言いながら陽人はひなたにヘルメットを渡した。(やっぱりこの人は不良なんだ!でも・・今からバス停に行っても間に合わないし・・どうしよう。)
ひなたが悩んでいたその時、ひなたはタクトの言葉にさらに驚愕する。
「コイツのバイクの腕前は俺が保証する・・何かあったら俺が責任取るから安心しろ・・」
「い、いやいや無免許なんてダメですよ!大人がそんな無免許の高校生にバイク乗せるなんておかしいじゃないですか!」
「誰が無免許つったよ?」タバコをくわえながらタクトが言った。
その言葉に思わずひなたは陽人を見た「・・・え?」