その日はお年寄りの女性に席を譲った事以外には大きな変化は無かった。
でも、私の心の中では大きな変化が起こった。
『お年寄りに席を譲る』その小さいけれど大きな勇気の行動が私を成長させてくれたような気がした・・・。少しだけれども私という個性を出せた気がしていた・・見た目は変わっていないけど昨日の私よりは強くなれた気がした。

=PM5:00 その日の帰り道=
私が学校からバス停まで歩いている時だった。
何故か古いビルの下に人だかりが出来ていました。
セレ学の近くには高級住宅しか建っていないので、人だかりができるなんてめったに無いことなので私はすぐに目に留まりました。
足を止めてビルを見ている近所の奥様方の話を聞いていました。
「いやぁねぇー」 「本当に何をするつもりなのかしら?」
「あらあの子、鈴高生じゃないの?」
「何を考えてるのか解らないわねぇ怖いわ・・」
(え・・・何?鈴高生?)
奥様方はどうやら上を見上げて話しているようだった。
私もつられて上を見上げる・・・。
(なっ?!何アレ?!もっもしかしてじっ自殺?!)
何とビルの屋上の柵を越えた所に人が立っていたのだ。
気が付くと私は近くの奥様方に声をかけていた「あのっ!」
「あら・・セレノア学園の子じゃない・・」
すると女性たちはすぐにひなたが東条正志の娘だと気付いた。
「あらっあなたもしかして東条さんの娘さんじゃないの?」
「あっそ、そんな事より!」
「こんな所にいないで早く帰ったほうがいいわ・・お家の方が心配するわよ?」
「そうよー鈴高生にかかわるとロクな事ないわ」
「・・・は?」(何それ・・人が飛び降りるかも知れないって時に何でそんな事を気にしてるの・・?)
女性たちはさらに続けた「それにあの鈴高生だってどうせ本気じゃないんだから・・きっと騒いでほしくてやってるだけよ!」
「そうよねぇ~」
「私もそう思うわ!」
「あの!!」この時自分でも驚くほどの大声で叫んでしまった。
「そんな事言ってる場合じゃないと思うんですけど!とにかくこのビルの屋上に行ける階段を教えて下さい!」
その言葉に奥様方は顔を見合わせて変なものを見るような目で私を見てから言った「そんなの分からないわ・・入った事もないし」
「それに屋上に行くなんて危険よ!」
(もうダメだ・・このオバサン達が何を言ってるのかまるで理解できない!)ひなたは女性達から離れると一人で屋上につながる階段を探した。