今の私は校則通りの長い三つ編みのおさげと足首より5センチ丈のダサいスカート姿。
でも本当は・・私だってオシャレをしてみたかった。髪を短く切って見たり、染めてみたり、メイクもしてみたかった。
こんな地味で勉強しか取り柄のない自分を変えたかった。
でも実際は・・ファッション雑誌を買う事すら許されないのです。
その時、玄関に居た父からいきなり名前を呼ばれたので思わず背筋を伸ばす。

「ひなた!」
「はい。」
「この前の小テストの成績98点だったらしいな」
「はい・・ごめんなさい」
ここで謝るのはおかしいのかも知れない。
98点と言うと普通の親なら褒めてくれるだろう・・だけど我が家では・・・。
「小テストで100点くらい取れなくてどうするんだ、ちゃんと勉強してるのか?」
小テストで100点は当たり前。
「気を付けます・・」
父はため息をつくとこう言った。
「まったく・・お前は私の娘なんだぞ?もう少し東条家としての自覚を持ちなさい!」
「・・はい」

ここでは誰も父には逆らえない・・・と言うか私の場合は逆らうのが面倒なだけだった。
「では行って来るよ・・」
「行ってらっしゃい」母の言葉を聞くと父は玄関から出て行った。
父が出ていくと何故かホッとする・・・。
「ひなたも早く出なさい」
「うん・・行ってきます」
私はいつものように家を出てバス停に向かった。
バス停までは歩いて15分かかる、そこからセレノア学園行のバスに乗り30分かかって行っていた。バス通学してる子は少なく、セレブが通うセレ学なだけに、ほとんどの生徒が自宅の車で運転手に送り迎えで通学していた。

私が通学で使っているバス停には一つだけ不思議な事がある。
それは・・バス停にぶら下がってるテルテル坊主だ。何でこんなところにぶら下がっているのかいつから有るのか私には分からなかったけれど、私がセレ学に入学する前から有ったのは確かだった。しかもこのテルテル坊主は汚れると毎回誰かが綺麗なのと交換しているみたいだった。いったい誰が何のためにテルテル坊主をぶら下げたのか入学してから今までずっと謎のままだった。

でも、私は・・この不思議なテルテル坊主に癒されていた。そしていつしか私は誰もいないバス停でこのテルテル坊主に話しかけるのが日課になっていた。
「おはよう・・。」