「いやーお前と話してると飽きねーかも!」
本気で笑う陽人に少しムッとしながらもひなたは言った。
「なっ・・からかわないで下さい!」
「だってウケんだもん」
「う、受ける?」(何を受けるんだろうと思ったけどまたからかわれそうな気がしたから言わないでおいた・・)
すると陽人が嬉しそうに笑顔で言った。
「よし!そしたら行くか!」
「行くって何処にですか?」
「いーから上にこれ着てろ!」そう言って陽人が差し出したのは青いスカジャンでした。
「え・・?」
「昨日は暗かったから目立たなかったけどまだこの時間じゃ人も多いし、俺は別に気にしねーけどお前はヤンキーとつるんでるなんてウワサになったら困るだろうから・・」
スカジャンを受け取りながらひなたは言った。
「ありがとう・・そんな事まで考えてくれるなんて、千葉君って気が利くんだね。」
「え?お前今更かよ・・なんてな!とにかく行くぞ!」
「はい!」
(この時の千葉君は何だか照れているように見えてそんな姿が可愛いなと思った。)

そして陽人が向かったのは青葉町の外れにある「桜ビル」と言う7階建ての白い外観のビルだった。
「着いたー!ここが桜ビル!」
「・・桜ビル?こんなビルの中で何をするの?」
「まぁまぁ、いーからついて来いって!」
陽人はひなたを連れて4階まで上がった。
エレベーターを降りて白い扉を開けて中に入ると・・そこには何と、明るいライトが何個もついている雑誌の撮影スタジオのような場所でした。
「うわぁ・・何ここ・・・すごい」
「ココはオレの秘密のアトリエ!」
「アトリエ?」
「よし!」と陽人はひなたを指さし、いきなりこう言った。
「今日からオレがお前をプロデュースしてやる!」
「え?プ、プロデュース?!」いきなり言われた言葉に私は戸惑っていた。

そんな私をよそに千葉君は自信満々な顔で言う。
「そう!プロデュース!楽しみにしてろよ」
「はぁ・・」 (この時は千葉君の言葉を特に深く考えていなかった・・・千葉君はただ将来の事も考えず今が楽しければそれでいいと毎日を過ごすチャラチャラした高校生なんだとしか思っていなかった・・でもそんな私の常識はいとも簡単に崩れる事になるのです・・)

撮影スタジオのような広々とした空間の一角には別の部屋があるらしく陽人はひなたを連れ白い扉を開けて中に入った。
扉の中は衣裳部屋のように沢山の服と化粧机のようなテーブルと折り畳み式のイス、鏡が無い更衣室があった。
ひなたが「わぁ・・凄い」と呆気にとられていると陽人がイスをひなたの前に置いて言った。
「とりあえず、このイスに座って!」
「え?は、はい」
ひなたがイスに座ると陽人はどこからか工具箱のような大きさのメークBOXを持って来た。