“隠し扉を見つけたんだ”
そう言って琥珀が案内したのは、埃がキラキラと舞う暗い部屋だった。中央には銀幕が設置されている。

「…はじまるようだ。」

映写機の回転する音が聴こえ、間もなく銀幕の上でピアノリサイタルが始まった。肌理の粗い、白黒の映像だ。琥珀や水仙に良く似た顔立ちの青年が、夢見るような表情で音を奏でている。


「誰だろう、」
「さぁね。あまり上手くないな。」
「…! 琥珀はピアノが弾けるの?」
「そいつよりはね。」
「エエッ、弾いてみせてよ!」


水仙は待ちきれないとばかりに夏麻のシャツにしがみついた。
だって琥珀のピアノ演奏なんて素敵に決まっている。聴きたい!聴きたい!!


「一年経って、君はおねだり上手になったね。」


少年はその美しい頬をふわり緩ませ、水仙の頭部に唇を寄せた。

「え、……」

一瞬、額に火が灯った。
そしてそれは、瞬く間に全身に広がってゆく。