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僕の初恋は他人より少し遅めの中学二年生の頃だった。
同じ美術部で、一つ年上の先輩だ。

男子部員が一人という心細い僕を気遣ってくれたのか、遥(はる)先輩は僕によく話し掛けてくれた。


「絵上手いね」
「うわ......え、いや全然ですよ!」


突如、絵を描いていた僕の背後から優しげな女性の声がして、描くのに夢中だった僕はつい身体がビクッと跳ねる。

遥先輩だ.....ビックリした。
それにしても上手いだなんて、遥先輩のが十分過ぎる程だし表現力豊かな絵を描く人だから、きっとお世話だろうな。

「驚かせちゃったね、クスッ。
でもその絵見てると絵が好きなんだなぁーって伝わってくるよ、そういう子は絶対上手くなる!!」



まだ恋を知らない僕は遥先輩に対して『お姉さん』的な存在に感じていた。


その年の冬。
冬休みの美術部は運動部と同様に朝から夕方まで部活を行っていた。

そして、部活帰りに忘れ物をしてしまい、部室に戻るとまだ明かりが付いていた。

誰か居残っているのか、とドアを少し開け顔を覗かせる。

あれは......遥先輩?