「桃子、帰ろ」


「まだあっついで」


「やからアイス食べるんやろーが」


「ええー」


ぷくっと頬を膨らませるのは計算なんだろうか。




……そんなわけないか。




無自覚だもんな、妙に腹立つ。



「えーやんえーやん。アイス食べよ」


「奢ってくれるん?」


「ーーー……モナカアイスなら。」


「やった!帰ろ!」


「お前、奢って欲しくて渋ってたん?」


「……」


静かになってしまった


地雷だったかもしれない。



途端に表情が曇る桃子。



「もーもこ。俺早くアイス食いたいからはよ用意してきな」


「はーい」


いつもの桃子に戻った気がする。



それでいい。


いつもの桃子がそばにいてくれればそれで。



***



「………」


「………」


「………」


お互いアイスを無言で食べて、無言で海を見つめる。


気まずくはない。


居心地が悪いわけでもない。



俺の隣にいるのは間違いなく桃子だし、



桃子の隣にいるのは俺のはずだ。




それでもなにかが引っかかる。