「ふーん…で、自分の恋バナも書いてくれと?」


「書かなくて良い。

ただ…桜雛にはそれを踏まえた上で、私を物語の中で動かして欲しい。」


「誰って、聞いてもええか?」


「うん…っていうか、知っててもらわないと困るんだけど…。

坂下…なんだ。」



「坂下ぁ!?」



私の声が大きかったらしく、お上品そうなオバサマばかりがいる周囲の注目を浴びた。



コーヒー飲んでる最中じゃなかったことが救いだ。


飲んでたら絶対に、咽るか噴いてるか…してる。



「あ…わりぃ、アンジェ。」


「いや、良いけど…。」



「えー、あの、すいません。

坂下ってさ…あの、坂下だよね?

梨香の担任のセンセ…。」


「桜雛、他に坂下ってキャラ作ってるの?」


「居ねぇけど。」


「だったら、桜雛の脳裏に浮かんでる坂下で合ってる。」



「…マジ?」


「マジ。」



「40過ぎの、只のオッサンなんだけど?」


「桜雛も、同じような歳の奏者追っかけしてるでしょ?」


「まー、そうだけどさ…。」


(アタシのことは余計なお世話だ、しばいたろか?)


ココロの中で思ってることが顔に出やすい私は、俯き、ひと呼吸置く。


顔を上げ、アンジェに対して口を開いた。


「坂下は、やめれない?」


「この気持ちを、無かったことにするの?」


そうして欲しいけど、無理…だよなぁ。


私は、盛大にため息をついた。