しばらくして、私のグラスが空になったのを気づいた澤弥は、グラスに酒を注いでくれた。



注ぎ終わった瞬間、舞い散る桜の花びらがグラスの中に入る。



グラスを眺めていたら、澤弥が話しかけてきた。



「続編、書く気無いの?」



「書いても良いけど、今度はちゃんと下書きしてからにする。」



「じゃないと、1章まるまる落としたままアップするもんな(笑)」



確かに…執筆途中で1章、完結ボタン押した後に1章落としたことに気づいた。



澤弥がケタケタ笑うのも、無理はない。



だけど、笑いすぎやろ?



「はいはい、どうせトリ頭だからすぐに忘れちゃいますよーだ。」



私は半分ヤケになりながら、焼き鳥の砂肝にかじりついた。



「焼き鳥ばかり食ってるトリ頭の桜雛は、共食いを好む…っと。φ(..)」



「澤弥ぁ~、何メモしてんだよ?」



私が、拳を握りしめながら立ち上がると…



「何やってんだ?」



という声が聞こえた。



恐る恐る振り向くと、自分の上司で…。



んなとこで酒盛りしたのがバレると、ヤバい!



回れ右して、澤弥の方を向くと…



澤弥も広げた宴会セットも、跡形もなく消えていた。



「お前の代わりはおらんで、精神ヤられたとかシャレにならんこと言うなよ?」



そんなつもりは無いが、この状況はどう説明したら良いんだろう?



私の手には、酒の入ったグラスだけが残されていた。