そんなことを思い出していると、澤弥が話を続けた。



「今回はさ、風呂敷を広げるだけ広げた感があるよな。」



「うん。」



私は返事もそこそこに、焼き鳥の軟骨にかじりついた。



「うん…って、それどうなんだよ?」



「そりゃあ…物語だから全て解決して、めでたしめでたしといきたいところだけど、たった2年で若菜が抱えてるモノ全部処理できるワケないし。」



「現実は厳しいってか。」



「それに、どんだけ長編だよ!って読者様に突っ込まれてもね…。

しかもタイトルが『はつ恋』だから、坂下にご退場いただいたのと同時に終了が丁度良いでしょ?」



「“ご退場”って…。」



澤弥が肩を震わせ、笑いを堪える。



じゃあ、『退場』なんて言葉をオブラートに包まず、はっきり『死んだ』って言えば良かったのかよ?



私は心の中で毒づきながら、グラスに残った酒をあおった。



澤弥は、まだ笑いを堪えてた。