「別に、心配してないと思いますが、私、元柔道部ですから。こう見えて力はあるんです。男の人の一人や二人、バンバン背負ってたんです!」


そう言いながら、史明の腕を取って、再び自分の両肩に載せた。
〝柔道部〟というのは実はハッタリだったが、史明を助けるためだったら、〝火事場の馬鹿力〟で、背負うことだって何だってできそうだった。


絵里花の考えが変わらないことを理解すると、史明は黙って絵里花の肩を借り、歩き始めた。

しばらくして、息が上がってしんどくなってきた頃、気を紛らわせるように史明が口を開いた。


「君が柔道部だったなんて、人は見かけによらないな」


史明の方から話題を持ちかけられることなんてほとんどない。本来ならば、とても嬉しいことに違いないのに、嘘をついている後ろめたさもあり、絵里花はぎくりと息を呑んだ。
このまま〝柔道〟のことを話題にされると、何も知らない絵里花はすぐにボロを出してしまうだろう。

内心焦った絵里花は、話題の矛先を史明本人へと向けた。


「岩城さんは?なにかスポーツしていたんですか?」


野暮ったくて、まるで冴えない史明だけど、その昔はスポーツ少年だったかもしれない……。そんな期待を込めて、問いかけてみる。