「……晶、この方たちは、歴史史料館の岩城先生と望月さん。例の蔵の整理で出てきた古文書の整理をしてくれているそうだ」


そんなふうに紹介されて、絵里花は頭を下げる。しかし、史明は軽く会釈をしただけで、ジッと晶を見つめ……、晶もジッと史明を見つめる……。

その絡み合う視線に、絵里花も胸騒ぎを禁じ得ない。


――まさか、岩城さん……。こんな女性が好みなの?!


女性といっても男性のように見え、それでいてとても美しいミステリアスな晶。こんな人が〝好み〟だったときには、絵里花がどんなに努力をしてもこの恋は叶いそうにない。


「あの、どこかで……?」


史明が記憶を検索すると、晶の方も頷いた。


「ああ、私も覚えている。大学の県人会で会ったことがある。君は私の二年下だった……岩城史明……だな?」


「ああ、同じ大学だったのかい?」


古庄さんがやっぱりニコニコしながら、合いの手を入れる。


「うん、岩城くんは文学部で私は法学部だったから、ほとんど面識も交流もなかったけど」


そう説明しながら、晶が絵里花へも優し気な眼差しを向けてくれる。絵里花はそれだけでドキドキとしてしまったけれど、その眼差しに迎え入れられるように微笑み返した。