史明の興奮を受けて、絵里花も心が浮き立ってくる。史明の手にかかって、史実が明らかになっていく過程は本当に胸が高鳴るものだと、絵里花は知っているから。
「今のところは見つかってないですけど…。そもそもこのコンテナは、近世の文書ばかりだからと、学会前には時間がなくてチェックしていなかったんです」
「……そこに、中世の文書が紛れ込んでいたということか……。古庄さんも年代別に文書を保管していたわけじゃないし、蒐集の時にも分別せずにどんどんコンテナに入れてしまったからな」
「とりあえず、他にも紛れ込んでないか、チェックしてみます。それから、他のチェックしてないコンテナも……」
そう言って絵里花が立ち上がる。たとえ短い時間でも、また史明のために何かができることに、絵里花の全身が喜びで満たされていた。
けれども、史明がそれを遮った。
「いや、磐牟礼城のためだけに、全部のコンテナをチェックするのは時間の浪費だ。急を要するわけでもないし、今みたいに目録を作りながら見つけられたときに、摘出して伝えてくれればいい」
「……はい。分かりました」
絵里花は頷いて腰を下ろした。消沈した気持ちを紛らわせるように鉛筆を握り直して、作業を再開させようとした時だった。



