歴史に対して崇高な感性を持つ史明が、そうやって自分を評価してくれるのはとても嬉しい。だけど、そうやっていくら認めてくれても、絵里花のこの切なく軋む胸の苦しさは癒されることはなかった。


「へえ?独自路線のお前が他人と共同で研究なんて、珍しいな」


重石からそう言われて、史明がチラリと絵里花に視線を向ける。絵里花がニコリと笑い返すと、史明も自然と微笑んだ。重石は視線を交わす二人を見て、


「……もしかして、付き合ってるのか?」


と、半分からかうようにニヤリと笑みを浮かべた。


その言葉に、絵里花の心臓がドキンと跳ね上がる。同時に、史明も赤面して過剰に反応した。


「……つ、付き合ってなんかない。邪推するにも程があるぞ!」


「うわ!お前。顔を赤くするの、気色悪いからやめろよ」


重石の指摘の通り、オタク仕様のビン底メガネで頬を赤らめる様は、いかにもヘンタイぽい。


「………」


重石の意地の悪い物言いに、史明は返す言葉が見つからない。すると、重石は調子に乗ってこんなことを言い出した。


「それじゃ、お前。望月さんと俺の仲を取り持ってくれよ」


「は……?!」


史明は絶句して、重石と絵里花を交互に見やった。