「さあ、グズグズしてる暇はない」 史明はお弁当を味わうどころではなく、残りのそれを口の中へと流し込んだ。 「俺は先に会場に戻ってるよ」 そう言い残すと、まだ食べている絵里花を残して、風のように控室を出て行った。 学会に来ている史明は、収蔵庫の中にいるいつもの史明よりも、ずっとイキイキしていた。どこよりもアカデミックで刺激を受けられるこんな場所が、きっと彼には一番似つかわしい場所なんだと、絵里花は思った。