僕はぼんやり、辺りを見る。

朔羅はどうやら、上手い具合に隠れたみたいだ。


昼間は咄嗟に対応出来なかったとしても、同じ失敗を繰り返す気はないらしい。

確かに昼間は変態と名高いメイド見習いだったからよかったものの、他のひとに見つかったら、どれだけの騒ぎになるんだろう。


「お気をつけくださいね」

専属執事の彼は言い置き、静かに部屋を出ていった。

僕はほっと息をつく。


「──朔羅?」

そっと。呼び掛けた声に、ん、と答えが返ってきて。

それからすぐに、彼女は姿を現した。


手には、奪った薬を握りしめたまま。

見ているこっちも痛いくらいに、ぎゅっと。