「だから、ダメっ」

「っ!?」


……夜。

眠れなくって、だから朔羅が寝静まるのを待ってから、こっそり睡眠薬を飲もうとしていると。

何かを恐れるような声で制止させられたかと思うと、パッと薬を取り上げられ、僕は水の入ったカップを取り落とした。


がしゃん、──と、結構な音。

普段僕と朔羅が話している程度ならともかく、こんな夜中に身をすくめたくなるほどの大音量だ、きっと廊下まで響いてるだろう。


予想通り。

すぐにガチャリとドアが開いて、挨拶もそこそこに、
「恭哉様、どう致しました!?」
と、専属執事が現れた。

「カップ、割っちゃった」

僕が言うと、お怪我はされませんでしたか、と言いながら、彼は手早く破片を片付け始めた。