幻奏少女

僕がとらえたのは、折り畳み式のナイフの切っ先。

あちこち探っているうちに、うっかり留め具を外してしまったみたいだ。


……見つけたナイフ。

それは、朔羅が簡単に僕を殺せるということだけでなく、僕もその気になれば彼女を殺せるということも示している。


強ばっていた手から、僕はふっと力を抜いた。


……身の危険を晒しながら、彼女は何をしたいんだろう。

そして僕は、どうして何もしないんだろう。


ただでさえ寝つきがいいとは言い難いのに、こんな状況でもちろん眠れるはずもなく。

結局一睡も出来ず朝を迎えて、朔羅に酷い顔、と笑われた。

「仕方ないじゃん」

っていうか、朔羅のせいだ。


なおも肩を震わせて、笑いを堪えている彼女に憤慨しながら、鏡を覗いてこれは酷いなと納得した。

確かに、人に晒せる顔じゃない。