「ちょっと、黒崎恭哉もどき」

ベッドを占領していた朔羅は、ふいにそう僕に呼び掛けて、それから小さく悲鳴をあげた。


「何してるの! ダメ!」


ダメ、って、まるで僕が自殺未遂でもしようとしているみたいだ。

彼女はたたっと駆け寄ってきて、パッと僕の手から薬を取り上げた。

ちなみに、怪しいモノじゃない。普通の睡眠導入剤だ。


なのに。力無くダメ、と繰り返す彼女は、顔色も悪く。

どうやら薬に、ほんとに嫌な思い出があるらしい。


「分かったから」

「なら、いい」


僕は薬を片付けて、ソファーで寝ようとすると、ぎゅっと襟元を掴まれた。

「何……?」

「逃げさせないよ」