君がいなくなって

「パパの、バイクの音が聞こえるかな?」

レースが始まって、チームのピット前をそーちゃんが通過していくときに、私は思わずお腹の赤ちゃんに声をかけた。

その瞬間、後ろでシャッター音が。

振り返ると沙織さん。

一瞬。

この間の光景が頭に浮かんで、顔が引き攣りかけたけど、何とか笑ってみせる。

「ご結婚、おめでとうございます」

隣にやって来た沙織さんに言うと、

「それはこちらの台詞よ」

と、苦笑いをされた。

「池田さん、明るい人ですね」

と言うと。

「そうね。ちょっと調子良すぎな所もあるけどね」

そう言って笑った顔がどことなく寂しそうで。

まだどこかでそーちゃんの事が好きなんだろうなって思った。

「赤ちゃんは順調?」

「はい」

そんな会話をしていると。

モニターを見ていたチームの人達が一斉にどよめいた。

「真由ちゃん!」

祥太郎くんが目を輝かせて

「そーちゃん、今、2位争いをしてるよ!!」