そーちゃんの向こうには沙織さんがいた。

私は息を殺した。

池田さんも冷静に今、目の前で起こっている事を見つめていた。

「お前もホント、しつこいな」

そーちゃんはまた、冷ややかに沙織さんを見つめている。

「諦めきれないわよ。
総一が一方的に別れを突き付けて…
今だに私は総一の事が好きなのに」

「…好き、だけでは俺を支えられないよ。
俺は支えてくれる人が欲しかった。
あの時も。
でも、お前は俺を支えるのは無理だった。
別れるには十分だろ」



あの時…?

昔、何があったのかな?



「真由は」

そーちゃんの口から出た私の名前。

一瞬、ビクッとした。

「いつでも俺に無償の愛をくれているよ。
あんな、辛い事が起こっても。
本当なら誰とも付き合えない状況なのに。
まあ妊娠がきっかけだけど、俺と一緒に生きていく事を考えて、答えを出してくれた。
…俺にはそういう人が必要なんだよ」

そーちゃんは、もう、いいだろ、と呟いた。

「…私だって。
総一の事は大好きだったし、愛していたわよ」

力なく、沙織さんは呟く。

「お前は隆道と結婚するんだろ?
何を今更迷う?
あいつの事をちゃんと見てやれ。
俺よりはお前の事を愛せる奴だし、何よりお前を愛してるから」

そーちゃんは沙織さんを見向きもしないでこちらに歩いてきた!