ずっと好きだった。でも今は彼の事しか見えない。

「ずっと雅典の事が好きだったのよ」

と燁子は言った。

「でも、今は、彼の事しか見えないの」




燁子は僕の前から姿を消した。

後には、燁子の残した空間だけが残った。

燁子の残したものを僕は拾い集めた。

僕はその喫茶店の机に向かって参考書を広げた。

まだ午後が始まったばかりだ。

まだ時間はある。

僕は僕の残された時間のために時間を使うべきなんだ。

今、やるべきことを精一杯やらなくてはいけない。

燁子が自分を生きたように僕の自分を生きるしかないんだ。



真剣に生きよう。

燁子が自分の全てを使って一人の男を愛しているように僕も今持てる力を未来に注ぐんだ。