燁子だった。

その次の瞬間、頬をたたかれる音がして、燁子は路地の端の方に倒れた。

路地の奥の方から、男が現れて、倒れた燁子の胸倉をつかんで、もう一度平手で頬をぶった。

燁子は地面にうづくまった。

男は猛烈に怒っていて、燁子の前で仁王立ちになり汚い言葉でなじった。

遙香は僕の腕を取り、僕の背中に身を隠した。

男は僕達に気が付き、一瞥し、僕らとは反対方向に歩き出した。

僕は燁子の方へ駆け寄ろうとした。

だけど遙香が僕の手を両手でつかみ、行ってはダメだと言うように首を振った。