その少年は小学生になってから一度も泣いた事がなかった。

なってから、といっても少年はまだ三年生なのだが。

「せんせい、ごはんはやく!」

「はいはい、静かに寝てようね卓哉くん。」

「今日は8時からぼくの好きなアニメがやるから、早くごはん食べ終わるんだ」

少年、もとい森田卓哉は今より幼い頃からずっとこの病院に入院していた。


三年生だというのに、学校には一度も行った事はなく、卓哉の唯一の家族である母親が買ってくる算数や国語のドリルで勉強していた。