「……こん…やく??」


言葉の意味が飲み込めず固まる。


彼は私と結婚するために、時間を作っては逢ってくれ、いずれは自らの発案した企画を成功させると聞いている。


最も現状あまり進歩したとか嬉しい知らせは本人はおろか風の噂にも聞いていないけれど。


「あんた、騙されてない?」


不意に、正美の言葉が頭をよぎる。


「あなたは、そうね。南の離島に店舗を出す予定があるの。行ってくれないかしら」


店内の商品を乱雑にあれこれ物色する手は、あなたの趣味でこんなものを仕入れて、会社の品位を落とさないでくれる?と言いたげだった。


もちろん私だけの意思で仕入れているわけではない。


営業の方が足を運んで紹介してくれるカタログを吟味し、ブランドのイメージに則って、立地のニーズに合ったものを極力お手軽に手に届く価格で提供している。


他と比べてリーズナブルだからといって粗悪品などもちろんない。


「……離島、とは、……異動、ということでしょうか?」


声が震えてきているのがわかった。


「私は、プライドを持ってこの仕事を、役職を全うしています」