演劇部の部室へと足を運ぶ
1年生は5クラスまであり、すべてA棟二階にある
そして演劇部の部室はB棟の三階
なかなかの距離である

しかし、何故だか僕には浮遊感があった。
足がついているのについていない。
そんな感覚に襲われながら階段を上る


やっとついた演劇部部室の戸を開ける
「Welcome to 演劇部!
よく来たわね。待っていたの」

いきなり出迎えてくれたのは咲莉先輩だった。
すると瑛心を見つけ、

「おや、はじめましてかな?和佐くんのお友達かい?」

「あ、そうなりますかね。こいつの名前は...」

「孝汰!自分で言うから!!!」
下を向き叫ぶ瑛心。
多分緊張しているのだろう
体が痙攣を起こしたように震えている。

「お、おれ!!渡辺瑛心です!!
ずっと咲莉先輩のファンでした!
いつも見てます!こないだの幸子の役感動しました
ほんとにほんとにすごいです!尊敬してます。」

畳み掛けるようなマシンガントークで話す瑛心
顔はもう、出来上がっている

「ふふ、ありがとう。そういってもらえると本当に嬉いわ。」
慣れているのだろうか穏やかに話しだす

「立ち話もなんだし中へお入り下さいな」

そう言って歩き出す咲莉先輩のあとを追いかける
瑛心はまだ夢心地らしく僕が話しかけるまでぴくりとも動かなかった。