このギャルは僕のです






カチッ、カチッ、カチッ・・・
時計の秒針の音が静かな部屋に響く。
なんか、遅いな・・・
今日も、来ないのか・・・?

──コン、コン、コン
この音で俺の顔は晴れたように輝いた。

──ガチャ...
もう見慣れた金髪が揺れる。
よく見ると、いつもより顔がこわばっていた。

なにかあったのかもしれない。
「おう、遅かったな、ひなの」
声をかけると、固かった顔がぱっと笑顔になった。
「えへへ、ごめんね!おじゃましますっ、一希」

俺の名前は、城山一希。
ひなのは、大谷陽菜乃。
2人とも両親が共働きなため、夕飯はいつもひなのと食べる。
家が隣同士のひなのは、幼稚園のときからの幼馴染み。家ではジャージ、みたいな俺とは程遠く、ひなのは中学生になったぐらいの時からだんだん服装が変わり、高1の今では金髪、ミニスカート、ピアス、メイクという感じ。いわゆる、「ギャル」。
小学生の時の、弱々しかったひなのとは正反対の明るい性格で、いろんな人から好かれている。

「ねぇ、なにぼーっとしてんの?ごはん、たべよっ!」
「っおお、そーだな」
ダイニングテーブルには二人前の、湯気をたてた美味しそうなカルボナーラが乗っかっていた。
「っきゃー♡ウチ、カルボナーラだいすき!さすが一希!」
「あ、あたりまえだろ?お前とはちげーんだよ?」
「わっ、うざーー!!一希のベーコン取ってやる!」
「っおい、やめろ!!」
1日の中で、いちばん楽しい時間。
「ねぇ、きいて!ウチね、今日〇〇君に告られた」
「まーたその話かよ。昨日は誰だったっけなぁ?」
「しゃーないじゃん?なんでか言われるんだからさ」
ひなのはギャルでありながら、なぜか初恋がまだらしい。
「んで、そいつはどーしたの?」
「断っちゃった。すきって気持ち、わかんないんだもん」
そんなヤツらより、俺の方がずっとずっと前からすきだったんだけど?
そんな言葉をパスタと一緒に飲み込み、話を続ける。


その後、2人でTVを見ながらデザートのシュークリームを食べ、しゃべくって。
あっという間に時間がすぎた。
「っやば!もうこんな時間じゃん!!!帰るね、今日もありがと、一希」
時計を見ると、ひなのが来てから3時間はゆうに経っていた。
「ん、おう。また明日な」
「おやすみー」
パタンと閉じられたドア。
また、静けさが戻る。
今日も言えなかった。
後悔とともに、布団へ向かった。