「…さむ、い…」



  …わたし、あのまま寝ちゃったんだ。



  お風呂上りのあとに眠ってしまったせいか、起きたばかりの体は、あまりの寒さに震え上がっていた。 このままでは、風邪を引いてしまう。部屋の時計を見上げると、二三時を指していた。


  しっかりと握ってあった携帯をふと見ると、受信ランプがチカチカと点滅を繰り返している。画面には、新着メール一件のお知らせが表示されていた。


  受信メールを開くと、『ありがとう』という短い文字が並んでいる。萩原くんからのメールだ。



 ―― そう言えば、さっき、まだ送ってなかったはず…。



  まさかと思い、送信ボックスを確認してみる。


  すると案の定、本文なしで送信してあった。


 もしかして、寝ている間に誤って押してしまったのだろうか?



「……っ」



  わたしは枕に顔を埋め、頭を抱えた。


 どうしよう。やってしまった。何か一言添えて送ろうと思っていたのに。


  そんなとき、携帯の着信音が耳元に鳴り響いた。わたしは、反射的にガバッと顔を上げ、携帯の画面を凝視する。相手は、萩原くんからだった。


 何で急に電話? と、頭が混乱状態に陥る。 だが、早く出ないと電話が切れてしまう。掛け直す勇気もないし、今出た方がある程度は緊張を軽減できる。わたしは、ドキドキしながら通話ボタンを押した。



「も、もしもし…」



 勝手に胸の鼓動が高鳴る。心臓に手を当てなくてもわかるくらい速い。



『もしもし。…寝てた?』



  電話の声は、何かいつも聞いている声とはちょっと違う。普段と違って、切なげな声をより深くしたようなそんな声だった。



「…え、わかるの?」

『声、掠れてる』



  いつもより低い声に、ドキッとする。



「さっき、…寝ちゃってたから。どうしたの? 電話なんかして…」

『急で悪いんだけど、明日、石田空いてる?』



 萩原くんの急なお誘いに、頭が付いていけない。最初何を言われたのか、すぐには理解できなかった。少し遅れて漸く理解したわたしは、シーツをギュッと握った。



「えっ…あ、あ、うん。…空いてるよ」

『さっき、牧原と話してたんだけど、松田と石田も入れて四人で遊びに行かないかって話してたんだ。…石田も行く?』