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 今日の空は、どんよりと怪しい曇り空を見せている。そのせいで、辺りはいつもより暗く感じた。


 学校の正門を潜り抜けると、玄関前では、もう既にほとんどの生徒達が集まっていた。グループごとに分かれた生徒達を、先生方が点呼をとっている。



 ――失敗した。

 もうちょっと早く出て来ればよかった。



「麗美、おはようー!」



 先にわたしを見つけた裕子が、こちらに向かって大きく手を振る。わたしは彼女に向かって駆け出した。



「おはよう!」

「あっ、なんかあたし達、…格好似てるね」



 そう言われてわたしは、自分の格好と裕子の格好をまじまじと見比べた。



「…あ、本当だね」



 パーカーの色がグレーというのも、七分丈のパンツも、赤色のスニーカーまで彼女と被っている。



「す、すごいね、なんか…」



 違いがあるとすれば、パンツの色ぐらいだろうか。何ともお見事なペアルックになってしまった。



「余程気が合うのかねえ…」

「ふふ。そうかもね」



 やがて点呼の確認が終わると、生徒達が流れるようにバスへ移動する。元々学校前で待機していたバスだ。クラスごとに、わたし達もバスに乗り込む。どうやら座席順は特に決まっていないらしい。



「ねえ、一緒に座らない?」

「うんっ。いいよ」



 裕子のお誘いを断るわけがない。わたしは、弾んだ声で頷いた。


 全員がバスに乗ると、クラス代表の議長が車内の通路――前の方に立って、説明を始めた。



「まず、これからバスに乗って行き、現地まで移動します。えー、そこから二五キロほどある、山頂を目指します。山頂を目指している間はスタンプラリーをやりますので、必ず押してもらうようにしましょう。山頂に着いたあとですが、先生方が各地点にいますので順にお昼を摂るようにお願いします。体調が悪くなったり、何かあったときは近くの先生に言って下さい」



  はーい、とクラスの気怠い返事が飛び交った。