あれから一週間が経ち、今日は遠足の行事が待ち構えていた。


 これまで、朱菜ちゃんと廊下で顔を合わせたことは何度かあったけれど、睨まれる一方で何も言ってくることはなかった。その代わり、廊下ですれ違ったとき、わざと彼女の方から肩をぶつけてきたことはあった。それくらいで、あとはそれ以外何もない。


 それでもわたしは、気にすることなく、彼にいつも通り接してきた。


 彼とは同じクラスメイトであり、友人であることには変わらない。確かに彼のことは好きだけれど、それ以上の関係を求めているわけでもない。もしわたしが彼を奪うために目論んでいるのなら、それは問題だけれど、実際わたしは何もしていない。ただ彼女に意思表示しただけであって、行動には移していない。


 だからわたしは、萩原くんとは自然に接しようと自分で判断した。もちろん、彼に「避けないで」と言われた、あの言葉も影響している。


 左頬の腫れはあまり大したことはなく、一日も経てば徐々に腫れは引いていき、治りは早い方だった。


 ――わたしにあれだけのことをして、彼女が萩原くんにこだわる理由は、一体何なのだろう。


 それにはきっと、彼に対する好意的な感情も含まれていると思うのだけれど。…いや、それほど好きってことなのかも知れない。でも、それだけが全てではない気もする。


 わたしは、軽く溜め息を吐きながら、グレーのパーカーに身を包んだ。


 買って貰ったばかりの、真新しいリュックの中身を覗き、再度持ち物を確認をする。


 準備が終わると、すぐさまリビングに向かった。