「…え?」と、思わずわたしは訊き返す。



「俺、少しだけわかったかも。……花咲さんはきっと麗美ちゃんを恐れてるんじゃないのかな」

「…どういう意味?」

「ある理由がちゃんとあって、――言ってしまえば、萩原と麗美ちゃんの間に、全く入る余地がないってことだよ」

「ある理由って…何?」

「…麗美ちゃんに取られちゃうんじゃないかって。多分、……それだけじゃないと思うけど」

「取ろうだなんて、そんなっ。…わたし、一度も考えたことないよ…」



 確かに二人を見ていると、嫌だなって、辛いなって思うことは何回かあった。けれど、萩原くんを奪おうだなんてそんなこと一切思ったことない。彼に対する態度だって、友達と同等で何ら変わりなく普通に接していたつもりだ。



「わかってるよ、それくらい。麗美ちゃん、優しいから」

「………ありがとう」

「ね、麗美。このこと、萩原に話さなくていいの?」

「うん。いいの。…お願い、絶対言わないで…」



 わたしのことで、彼に心配を掛けさせるのはどうしても嫌だった。もし言ってしまったら、萩原くんは朱菜ちゃんを怒り、自分から彼女を突き放してしまうかも知れない。萩原くんは優しいから、きっと彼女を責めるだろう。


 二人が、今回のことが原因で壊れて、もし別れてしまったとしたら、…わたしはきっと耐えられない。そんな展開、わたしは望んでいない。たとえわたしが萩原くんを好きだとしても、自分のせいで二人が別れてしまったら良い気はしない。


 裕子と牧原くんは、お互いの顔を見合わせる。



「わかった。……でももしまた何かあったら、すぐあたし達に言って? 絶対だよ」

「うん。…ありがとう。…絶対話すよ」



 わたしは、ふと視線を落とす。裕子の腕には紙袋が抱えられていた。彼女はそれを、大事そうに抱えている。紙袋の中身が何なのか思い当たって、わたしは二人の顔に視線を戻した。