「萩原は、これは俺自身の問題だとか何とか言ってたんだろ?」

「う、うん」

「ということはだ…。多分萩原の中で何か迷いがあるとか…。だから距離を置いたとか…ん?」



 牧原くんは首を傾げ、頭を抱えた。



「もしくは、花咲さんが原因で距離を置いたとか」



 牧原くんをフォローするかのように、裕子は横から口を挟む。



「……ごめん。自分で言っておいて、何かだんだんわかんなくなってきたわ」



 牧原くんが眉間に皺を寄せる。



「ううん。…大丈夫。二人とも今日は本当に…ありがとう」

「でもさ、酷すぎるよね。花咲さん」

「…わたしがいけないの。わたしが、萩原くんといるところ、多分、朱菜ちゃんより…多かったから…。だから知らない内に、傷つけてしまっていたんだと思う」

「でも、やり方があまりにも酷すぎるよ。手上げるなんて、それこそ最低な行為だよ。しかも麗美は、萩原に何もしてないし、好きだとか何も言ってないじゃん。それに、確かに席は近いし友達だからよく話すこともあるだろうけど、……それって変だよ」



 裕子は、朱菜ちゃんに怒っているのだろう。時々声を張り上げながら、怒りの表情を浮き彫りにさせている。



「それじゃあ、ただの我儘な子供染みた嫉妬じゃんか。そんなに萩原と一緒に居たいなら、教室まで迎えに来ればいいと思わない?」

「……それができないんじゃないかな」



 牧原くんは、ポツリと呟くように言葉を発した。