Sweet Love

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 長く感じた入学式も無事に終わった。お母さんは教室前の廊下で担任と挨拶を交わしている。わたしは廊下で兄ちゃんと、主に先生のことや部活のことについて会話をしながら時間をやり過ごしていた。


 わたしのお父さんは単身赴任で今は家に居ない。だから普段はお母さんと兄ちゃんとわたしの三人で暮らしている。でも寂しいとは思わない。仕事が順調なら三ヶ月に一度は帰ってきてくれる。



「おお! 優希(ゆうき)!」



 兄ちゃんはその人に向かって大きく手を振る。その人は、兄ちゃんに気付くと急ぎ足でこちらに駆け寄ってきた。



「誠二。あ、麗美ちゃん。入学おめでとう。すごく似合ってるね、制服」

「あ、ありがとうございます…。迷惑掛けることもあるかも知れませんがよろしくお願いします」



 優希さんは、兄ちゃんの大親友である。


 わたしが小学生のときから優希さんは既に兄ちゃんの友達で、よく家に遊びに来ていた。


 そして今も度々家に出入りするほど、とても仲が良い。


 優しくてかっこよくて、気配りもちゃんとできる人で、おまけに何でもできちゃう人。文句を付けたいと思うような点はひとつも該当しない、完璧な人でもあった。


 神代優希(かみしろ ゆうき)さんは、わたしの憧れの人でもある。



「優希、今日うち来るだろ?」

「あ、うん! もちろん行くよ。だって今日は麗美ちゃんの入学祝いだもんね」



 にこっとわたしに向けた優希さんの笑顔が相変わらず素敵で、わたしはつい照れ笑いを浮かべた。わたしと話すとき、身長の高い優希さんは必ず屈み込む姿勢をとる。わたしが見上げなくても済むように、いつもこうやって合わせてくれる。



「真っ直ぐ来るか?」

「うん、そうしようかな」