間もなくして裕子は、帰り支度を始めた。牧原くんも自分の席に戻って、帰る準備を始めている。


 支度が終わると裕子は、「また明日ね」とわたし達に挨拶を残し、二人して教室からそそくさと退散していった。



「石田」



 二人が居なくなったあと、背後から萩原くんに呼び掛けられて、わたしは振り返った。



「さっきのって、…何?」

「もしかして、何か勘違いしてない?」

「…え、何が?」

「さっきのだよ。松田と牧原の会話のやりとり」



 ――どういうこと?



 首を傾げて、わたしは訊き返す。



「会話のやりとり?」

「やっぱり…。完璧に勘違いしてる」



 その瞬間、彼の表情が崩れた。萩原くんは肩を震わせながら、声も出さずに静かに笑う。



 ――え…?

 …だから、何でそこで笑うの?



「ねぇちょっと…さっきのって告白じゃないの?」

「やっぱり、告白だと思ってたんだ」



 萩原くんはツボに入ったのか、更にお腹を抱えて声を出しながら笑い始めた。



「え、違うの? 告白じゃなかったの?」

「ち、違う、違う」



 どうやら彼は、笑いすぎてまだちゃんと喋れないらしい。