「へえ。知らないうちに、そんなに親密になっちゃったの?」

「そんな仲までいってないよ。あんたこそ最近、麗美とどうなのよ」



 萩原は自分達のことを振られると思っていなかったのか、一瞬面食らった顔を見せた。



「一言で表すと、順調」

「…そ、そっか」



 順調ということは、…ラブラブだと捉えていいのか。



「俺らのことはいいんだけどさ。俺さ、思うんだけど、お前と牧原最近何かあった?」

「…え?」



 牧原の名前を急に出され、目を丸くする。


 変に動揺してしまったあたしは目を泳がせた。


 そんな様子を見て萩原は言った。



「やっぱり、何かあったんだ」

「…あるわけないじゃん。何言ってんの」



 萩原、鋭すぎ…。



「お前さ、石田の兄ちゃんのこと本当に好きなの?」

「す、好きに決まってるじゃん」

「無理矢理好きになろうとしてない?」



 萩原の言ってる意味が全然わからない…。



「あんた何言ってんの? 好きだから好きなんだってば!!」



 あたしは教室で吠えた。その瞬間、教室のドアが突然開いた。



「あ」
「あ」



 あたしと萩原は一斉にドアの方向に目をやった。



 …げ。誠二先輩…。

 今の、聞こえてたよね、絶対…。



「あれ。すごい怒鳴り声聞こえてきたんだけど、おかしいな。今、告白中だった? ...ってお前! 麗美の…」



 入ってくるなり誠二先輩は、萩原を見つけるとすぐに顔色を変えた。



「てめえ、浮気すんのか。取っ替え引っ替え、女と付き合ってるのか」



 ――これは、非常にマズイ。



「先輩、ち、違うんですよ。わたし、告白なんかしてないですから」



 あたしは焦った。


 これからあたしが告白するのは誠二先輩なのに、このまま勘違いされては困る。


 況してやその勘違いで麗美と萩原の付き合いを反対されてしまっては大変だ。