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 今日はどうしても麗美と一緒にお弁当を食べたくて、二人きりで中庭で食べた。


 麗美の話によると、麗美と牧原は、部活に無事入部できたらしく、今日の放課後はミーティングがあるんだとか。「頑張ってね」と言うと、麗美は嬉しそうに「遊びに来てね」と笑顔で言ってくれた。


 それからお昼を済ませたあと、あたし達は自分達の教室の前へ場所を移動した。


 廊下の窓の縁に頬杖をつきながら、ぼんやりと中庭を見下ろす。中央のベンチには、さっきまでは居なかった誠二先輩と優希先輩が座っており、その周りを取り囲むように知らない先輩方が数人立っていた。


 それは主に女の子達で、誠二先輩達と楽しそうに談笑している様子が窺える。あの中に混ざってみたいけど、自分にそんな度胸はない。



「あたし、先輩に告白しようかな。…今日」



 誠二先輩を眺めながらポツリと呟いた。



「兄ちゃんに?」

「…うん」



 だってもし結果がよくてもよくなくても、牧原と普通に戻りたいんだもん。

 いつまでもギクシャクしているのは、…イヤだ。



「裕子。本当に、…兄ちゃんなんかでいいの?」

「どういう意味?」

「…ううん、深い意味はないよ。兄ちゃん、いつも意地悪だし、あんなのどこがいいのって逆に思うんだけど…」

「…全部。むしろ、パーフェクト」



 麗美は、難しそうな顔をして眉間に皺を寄せた。



「…うーん」

「きっと麗美は兄妹だから良さっていうものがわからないんだよ」

「そう、なのかな?」

「ていうか意地悪されてるのは麗美だけだよ。あたしまだ意地悪されたことないし、言われたこともないもん」

「でももし付き合い始めたら、兄ちゃん、本性出すよ…。がっかりするよ、多分」

「…いいの。そのときは全部受け止める。だって好きなんだもん。当たって砕けろ、だよ」



 拳で胸をボンっと叩き、最後の言葉は少し強めに言った。